復元が待たれる三井寺の名庭

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善法院は、三井寺の六碩室のひとつとして格式の高い僧坊でした。
広大な庭園は、江戸時代の『近江輿地志略』や『築山庭造伝』にも名庭として紹介され、昭和9年(1934)に名勝史跡に指定されました。
ところが、昭和十六年の豪雨災害で土砂に埋没し、現在は往時の姿をとどめていません。幸いにも庭園研究の大家・重森三玲による実測図が残り、近年の発掘調査により池の形状や石組なども良好に保存されていることが確認されました。平成29年(2017)には保存活用計画も策定され、一刻も早い復興整備が待たれています。

“六碩室”

江戸時代の三井寺で、とくに格式の高い六つの僧坊の総称。南院に属する法泉院、勧学院、金乗院、中院の日光院、善法院、北院の喜見院をいう。

“近江輿地志略”

江戸時代、滋賀県(近江国)の自然や歴史をまとめた代表的な地誌。101巻100冊から成る大部なもので、膳所藩士の寒川辰清(1697~1739)によって享保19年(1733)に編纂された。滋賀県の地域史を研究する上では欠かすことのできない基礎資料となっている。

“築山庭造伝”

北村援琴斎(きたむらえんきんさい)が著した作庭書。享保20年(1735)、京都で刊行。上・中・下の3巻からなる。この書物は好評を博し、庭園趣味の普及に大きく寄与するとともに、明治時代以降の作庭にも影響を及ぼしつづけた。

“重森三玲”

昭和期の日本の作庭家・日本庭園史の研究家。(1896〜1975)

江戸時代初期