祖廟への中門

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大師堂の正面に建つ檜皮葺の中門です。慶長期の再興に際して大師堂とともに建築されました。
唐破風を正面とする向唐門で、本柱は大面取の角柱とし、両開きの扉には桟唐戸を吊ります。桟唐戸は上部が連子、下部を襷桟につくります。中央の板蟇股の形などに桃山時代の特色を示しています。
延宝2年(1674)の修理の際に獅子口を新調しており、この瓦には「桟瓦」の考案者である西村半兵衛正輝の銘が残されています。

“檜皮葺”

檜皮葺

ヒノキの皮を剥いだ檜皮を竹釘で打ちつける工法で葺いた屋根。

“唐破風”

唐破風

中央が高く、左右になだらかに流れる曲線をもつ独特の屋根。

“向唐門”

向唐門

唐破風が正面にある門。

“大面取の角柱”

大面取の角柱

面取りは、柱の角を削り取ることで、角柱の四方の角を45度方向に削って面を取る「切面」が一般的であるが、柱幅を基準にして削り取る面幅によって、大きいものを「大面取」、わずかしか削らないものを「糸面」、直角の角を僅かに内に入りこませる「隅入」などがある。

“桟唐戸”

桟唐戸

框の中に桟を組み、その間に薄板や連子をはめ入れた戸。

“連子”

連子

組子を縦か横に並べたもの。

“襷桟”

襷桟

“蟇股”

蟇股

二本の水平材の間に置かれ、カエルが股を広げたように曲線状に左右の両裾が広がった部材。また鏃(やじり)の形状のひとつである刃先が二股に分かれた雁股(かりまた)から転じたともいわれる。

“桃山時代”

時代区分の一つ。16世紀後半、豊臣秀吉が政権を握っていた約20年間の時期。美術史上は安土桃山時代から江戸初期を含め、中世から近世への過渡期として重要。特に豪壮な城郭・殿邸・社寺の造営やその内部を飾る障壁画が発達。また、民衆の生活を示す風俗画の展開、陶芸・漆工・染織など工芸技術の進歩も著しい。

“獅子口”

獅子口

鬼瓦と同様、屋根の破風を飾るための棟の両端に置かれる瓦。とはいえ獅子の顔が描かれているわけではなく、経巻と呼ばれる筒状の瓦や下部の左右に延びる鰭などから成る。

“桟瓦”

桟瓦

横断面が波形の瓦一種類だけを使う葺き方で、江戸時代に考案された。本瓦葺に比べて経済的なことから簡略瓦とも呼ばれていた。現在、町屋や住宅などで普通に葺かれているのが桟瓦葺である。

“西村半兵衛正輝の銘”

西村半兵衛正輝の銘
桃山時代
一間一戸向唐門 檜皮葺